February 12, 2008

アーネスト イリー氏 死去

また、コーヒー業界にとって大切な人がお亡くなりになりました。

mr_illyアーネスト イリー氏 イリー社前社長 享年82歳

科学的アプローチを取る完璧主義者であり、コーヒーのブランド化を成し遂げた人であり、何よりもエスプレッソの伝道者であったアーネスト イリー氏が2008年2月4日イタリアのトリエステで亡くなりました。


「我々イリーのコーヒーは少なくとも、その辺のありふれたものの2倍の値段はする。」「我々の目標は完璧な豆、欠損豆がない豆を作り出すことであり、それにい限りなく近づいていると考えている。」と生前語っています。

お気に入りのドリンクであるエスプレッソについても「素晴らしいエスプレッソは、舌の上で絵を描いてくれるようなものだ」と言い、そして正確さ、緻密さを備えた製品に仕立て上げました。


業界で発揮されたリーダーシップには、惜しみない賛辞が贈られています。


◆化学者の顔を持つ経営者◆

イリー氏は、1947年イタリアのボローニャ大学で化学を専攻し、学位を取って卒業しました。その後、すぐに父フランチェスコ イリーが1933年に設立した会社、イリーで働き始めます。

もともと父のフランチェスコ イリー氏はハンガリー出身のショコラティエでしたが、第一次世界大戦後にトリエステに移住しました。

torieste
トリエステは、アドリア海に面した港町で、アフリカや南アメリカからの荷を受け取る場所として最適だったことからコーヒー貿易の中心地となり、同時にヨーロッパ各都市へ発送場所となったそうです。


1963年に経営者となったアーネストは、多大なる影響力を発揮します。
イリー社は彼の指導の下、最新の洗練された機器を備えた研究所を設立します。
そして、そこでは、8ミクロンの厚さにカットされたコーヒー豆を電子顕微鏡で分析したり、全ての製造工程がコンピューターによって監視されるなど最新かつ細心の研究が行われています。
生豆が荷揚げされた時点から、密閉缶に入れられた焙煎豆が出荷されるまでの間に114もの品質管理のためのチェックがあるそうです。


イリー氏は、毎日、彼が訓練した15人のスタッフとともにイリー社が購入を検討している多くの豆のサンプルの味をみていました。


焙煎しすぎた豆や他の素材を加えたりすること(特にミルク)に対しては、失敗した焙煎豆をカバーするためだ、といったようにやや蔑視感情をもっていましたが、エスプレッソに対する並々ならぬ愛情と情熱ゆえだったのでしょうか。
イリー氏はエスプレッソの生き生きとした香り、力強い風味、そしてベルベットのようなベーゼルナッツ色をしたクレマに対しての愛情です。


彼は本当にあくなきエスプレッソ愛好家であり啓蒙家でした。彼の尽力によって、世界中の人々にエスプレッソは存在するコーヒーの中で最も洗練されたものであると認識させたり、エスプレッソをカフェで楽しむイタリア人常連客のように、家庭でコーヒーを飲む人も同様に魅了することができるコーヒーにしたのです。


イリーが大切にする「科学と芸術」のアプローチは、こうしたアーネスト イリー氏の尽力が本当に大きいのですね。


イリーが限定コレクションとして出すカップコレクションの元々は、イリー氏が技術工学と人間工学を学び、エスプレッソの味をより引き出すために最も適したカップを開発したことが始まりだったようです。

そこで開発したカップをきっかけに1990年から、アーネストの息子の一人であるフランチェスコがコレクションをその時々のアーティストとコラボレーションして始めたました。


◆産地の人にも愛される"Papa Bean"◆

イリー氏の功績は何もエスプレッソだけに限りません。

1990年代初頭に世界のコーヒー価格水準が暴落を乗り越え、公平な市場価格を獲得できるたように優れた豆を生産できるよう、ブラジルのコーヒー生産者達とともに、活動を開始したことです。


そして、最も良い生豆を作り出した生産者に賞金3万ドル(日本円で約300万円)を贈る大会を毎年開催しています。
素材に対しても飽くなき研究と愛情を惜しまない彼は、"Papa Bean"と、彼の教え子や友人から愛情を込めてこう呼ばれたそうです。

以前、ロースターの方とお話ししていた時、産地の人々も敬意を込めてイリー氏を讃えると聞きました。


完璧なエスプレッソを作るには?との質問に、答えは明確でシンプルでした。「愛情だよ、もちろん!」

こうした愛情と情熱が今後もイリー社の中で大切にしてもらえたら、と思います。
心からのご冥福をお祈りします。


◆その他、簡単にイリーについて◆

1933年、イタリア・トリエステにて創業。

1965年に家庭用にパッケージ化したコーヒーを販売開始。
1972年、初のポッドタイプの販売を開始。

1975年 北米に進出
1990年 イリーコレクションがスタート

現在の年間売上高は、140カ国で展開し、約350億円。ネスレなどの巨大企業と比べると規模は小さく感じられるが、ハイブランドとしての地位を確保しています。

現在の社長は、息子のアンドレア イリー氏

illy_bookアーネスト イリー氏はパリを拠点とした研究組織を作ったり、化学的なアプローチで著した「Espresso Coffee : the chemistory of quality」を発刊(息子アンドレアと共著。現在2版目が出ています。)しています。
実は私もこの本を持っているのですが、化学用語が結構出て来て相当手強い本です。でもコーヒーピープルから一読の価値ありと言われたので、本当にたまに少しずつ読んでいます。






reference:coffeegeek & nytimes


masonbar at 23:11 │Comments(0)TrackBack(0)コーヒーピープル 

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