April 13, 2006

コーヒーピープル:ジョージ ハウエル氏(3)

b4a029de.JPG さてさて最後のパートです(長くなってすみません)

パート1パート2とジョージさんのコーヒー業界における足跡を辿ってきましたが、今回はこうした経験から最終的にはやはりコーヒー豆そのものの追求へと戻って来た話をしたいと思います。

□Terroir Select Coffee(テロワール セレクト コーヒー)を設立□

2004年、彼は表舞台へ再登場します。
高品質なコーヒーを生み出す農園をもっと世の中に広く紹介したい、農園主たちと買付業者が対等の関係となり、もっとより良いコーヒーを作り出せるようになるべきだ、素晴らしいコーヒーは、ブレンドすべきでなく、単一のシングルオリジンとして楽しむべきだ、、とこうした想いから、自身の会社「テロワールセレクトコーヒー」を立ち上げます。

彼は優れたコーヒーをワインのようであるとよく表現します。
テロワールなコーヒーを世の中に送り出し、まだ未知の農園を探し出し、日の目をみてもらうことを目標としています。

テロワールとは、ワインの世界でよく使われる言葉で、その生産されている地域の風土や特性などから生まれでるその土地ならではのものを指します。



□2005年度ワールドバリスタチャンピオンへ豆の提供□

昨年シアトルで開催された2005年ワールドバリスタチャンピオンシップでひとつの衝撃的な事が起きました。

昨年の世界大会の覇者は、デンマーク代表のポールセンさん。

その彼がジョージさんが焙煎したエスプレッソを使い、見事優勝を果たします。
その豆がなんと!シングルオリジン!、すなわち一つの地域だけで構成されるエスプレッソを使って優勝したのです。
これは、関係者には大きな衝撃を与えました。

*通常、エスプレッソに使う豆は、大体においてブラジルが中心ですが、その他その店の好みに応じて数種類の地域(インドネシアの豆やアフリカの豆など)を加えてエスプレッソブレンドを作り出します。

このエスプレッソは、ブラジルのダテラ農園のもので、同じ農園の異なる種の豆を混ぜているので、極めて正確に言えばブレンドですが、それでも使っているのはブラジルの豆だけです。
今までは、一国だけでエスプレッソを構成することはあり得ない事であり、かつその一農園の豆だけで素晴らしい味を出せるという事が非常に衝撃的だったのです。(ちなみにチャンピオンのポールセンさんが抽出したエスプレッソにはのきなみ高得点が付けられていたそうです)

ポールセンさんは大会への参加を決めるやいなやジョージさんに電話をして彼のコーヒーを使いたいと依頼してきたそうです。
ポールセンさんが表現したい味に、まさにぴったりのエスプレッソだからだと。これはとても嬉しかったそうです。

とりわけヨーロッパでは、エスプレッソ発祥のエリアでもあり、ブレンドしたエスプレッソが当たり前になっていましたから、そうしたエリアで自身のコーヒーを求められたのはとても嬉しかったそうです。

アメリカでは、ダークロースト(色も黒に近い焦げ茶)が好まれる傾向にありますが、彼の焙煎はそれよりも多少浅い焙煎になっており、このエスプレッソで作り出すカフェラテ、カプチーノはまさに筆舌に尽くし難いおいしさだそうです。

これも全てはCoffee Connectionをオープンした時、うさんくさい外部に委託せず、自分たちで焙煎を行ったことがこの素晴らしい結果へと結実したんですね。


□焙煎だけでなく生豆の研究も□

豆の善し悪しは、焙煎もさることながら、生豆の品質にも大きく左右されます。
ジョージさんは、コーヒ豆自体の品質もさることながら、扱い方と保管方法の品質向上にも努めています。なぜなら、生豆そのものもなるべく新鮮に保つべきであると考えているからです。

そのため、ジョージさんは、生豆そのものを冷凍、するそうです。
生豆も麻の袋に入れたまま倉庫で放置しておくと、そのコーヒー豆を特徴づける素晴らしい香りや味が劣化するからだそうです。
結局、新鮮でない生豆を使うとどうしても深煎りの傾向になってしまうそうで(しかも深煎りにすると消費者は気付かない)、ジョージさんのように少し浅めの焙煎をしようとすると生豆の新鮮さが非常に重要になるそうです。

従来だと、生豆はそのまま麻の袋に入れておいても品質が劣化しないから、倉庫もさほど必要ない、というのがコーヒー業界では通説といってもいいかと思いますが、、これもかなり意外なお話でした。


ジョージさん曰く、こうやって生豆そのものの研究をしていると、スペシャルティコーヒー、そしてエスプレッソという世界は、赤ちゃんのような生まれたばかりの業界なんだな、と思うそうです。

それはレストランなどの業界に豆を卸していても感じる、と。
有名なレストランでさえ、コーヒーに対しては力を入れることがなく、料理はすばらしい(food is fine)のに、コーヒーは”Cup of Indifference”無関心の一杯になってしまっていると言います。

深い理解と尊重があれば、思慮深い心のこもった扱いを受けられるし、さらなる(新しい農園やコーヒーの)発見へと繋がるとジョージさんは考えています。


□バリスタにとって、コーヒーの世界で働く人間にとって大事なこと□

From seed to cup 豆からカップまで

ジョージさんは、世界チャンピオンのポールセンさんを高く評価しています。これは彼が自分の豆を使ってくれたからではありません。
ポールセンさんは、(多くのバリスタや人々が陥りがちな)エスプレッソを理解することがコーヒーの理解につながると思って自分のベースを作り出すのではなく、コーヒーそのものを学んで、それをエスプレッソに応用する点が非常に素晴らしいと言っていました。

コーヒーの誕生からカップへと届くまでのプロセスを理解することは何よりも大事なことだと言います。

「農園主たちは、自分のコーヒーを自分で飲まなければ、それがどんなものだか分からない、地域毎や国別に飲み比べたりしなければ、自分たちの味は理解できないだろう?」
「バリスタも業界で働く人間も一緒で、その豆がどこからどうやって生産され、この品質を持っているのかをきちんと理解しなければ最高の一杯を生み出す事はできない。」
「探究心や、探究心から生まれでる情熱、伝えたいという想い、これらが本物の品質を求める原動力になっているんだ。」

基本を知って初めて応用ができる、、本当に基本的なことが大切である事を改めて気付かされました。そして、情熱と継続する心と。

コーヒー、それに携わる多くの人々への深い尊重と理解、こうした思いを大切にしながら、ジョージさんの橋渡し役としての使命は今後も続き、その土地、その土地ごとの”テロワール”なコーヒーを紹介し続けてくれることと思います。

(終)

***

余談ですが・・・
自宅で焙煎に挑戦している”ホームロースター”の皆様。
自宅でもできれば密封タイプのものに入れて生豆を冷凍保存した方が良いそうです。
新鮮さが全然違うそうですよ!



masonbar at 23:22 │Comments(0)TrackBack(0)コーヒーピープル 

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